Column コラム

介護離職を選んだ人たちの声

1.介護離職を選んだ人たちの声

介護離職の相談を受けていると、表面に見える理由だけでなく、その背景にある不安や責任感が離職の判断に影響しているケースを多く見かけます。退職は、その後の働き方やライフプランに関わる重要な選択です。誰もが悩み、迷い、葛藤しながら決断しています。それでも、後になって「もっと違う選択ができたのではないか」と振り返る人たちの声を、私は何度も耳にしてきました。今回はその具体的な事例をご紹介します。

(1)職場に迷惑をかけたくないAさん

Aさんは「職場に迷惑をかけたくない」と言って退職しました。親の介護が急に必要になり、通院の付き添いや夜間の見守りが増え、仕事を休む日が増えていきました。周囲の視線が気になり、申し訳なさが募り、誰にも相談できないまま退職を選んだのです。しかし、介護は3か月ほどで落ち着き、デイサービスの利用も始まりました。再就職を希望したものの、40代後半での正社員求人は少なく、パート勤務に。年収は半分になり、「あのとき、職場に相談していれば違ったかもしれない」と静かに語っていました。会社に迷惑をかけたくないという思いから選んだ退職が、その後の働き方や収入に影響する結果となりました。

(2)一人で頑張り続けたBさん

Bさんは、仕事と介護を両立した疲れが限界に達して退職しました。仕事はフルタイム、介護はほぼ一人で担い、夜間の介護で睡眠不足が続きました。ミスが増え、自分を責め、心身ともに追い詰められていきました。「このまま続けたら壊れてしまう」と感じて退職したその判断は、当時の自分を守るための精一杯の選択でした。介護はその後2年続きましたが、途中でショートステイや訪問介護を利用し介護負担は軽くなりました。介護が終わった後、再就職を目指しましたが、正社員復帰は難しく、契約社員として働くことに。年収は大きく下がり、「もっと早く支援制度を利用していれば、ここまで一人で抱え込まずに済んだかもしれないのに」と振り返っていました。限界まで働く日々の中では、制度の存在に気づく余裕すらなくなるのです。

(3)家族のために仕事を辞めたCさん

Cさんは、家族から「夫の親の介護に専念してほしい」と求められ、退職を選択しました。夫の兄弟は遠方に住み、介護を担えるのは自分だけでした。夫の年収の方が高かったこともあり、経済的背景や家族の期待を踏まえ、仕事を辞める決断をしました。介護は3年続きましたが、途中で施設入所となり負担は軽くなりました。再就職を希望したものの、ブランクが長く正社員復帰は難しく、年収は大幅に下がりました。「家族の気持ちは理解している。でも、私の人生設計は大きく変わってしまった」と語る声には、誰にも言えなかった寂しさが滲んでいました。

2.介護離職をして気づいたこと

離職後に当時を振り返り、「ほかの選択肢もあったかもしれない」と感じる方もいます。これらの事例から、介護そのものだけでなく、必要な支援や制度、相談先の情報に十分アクセスできなかったことが、離職の判断に影響した可能性も伺えます。また、迷惑をかけたくない、弱音を吐きたくない、家族の期待に応えたいと感じる人もいます。しかし、その優しさが自分の未来の選択肢を狭めてしまうことがあるのです。

3.介護離職は「一人で決めなくていい」

介護は、時間とともに状況が変化していきます。だからこそ、目の前の介護だけでなく、その後の働き方やライフプランも含めて考えることが大切です。キャリア、生涯年収、生活の安定、社会とのつながりを考えたとき、後悔しない選択をするためには、退職という選択をする前に、どうか一度立ち止まってほしいのです。

「退職はいつでもできる」。その一方で、「相談することによって、退職以外の選択肢が見つかる場合もある」。職場の相談窓口や人事・労務担当者、東京都やその他の自治体の支援機関など、相談相手はさまざまあります。誰かに話すことで、視野が広がり、選択肢が増えます。介護休暇や介護休業、短時間勤務などの両立支援制度のほか、勤務先によってはテレワーク、フレックス勤務制度を利用できる場合もあります。介護保険サービスや自治体独自の支援など、あなたが知らない情報が、実はたくさんあります。

介護離職は、その後の働き方や収入、ライフプランに大きな影響を及ぼす可能性があります。だからこそ、情報と相談に基づいた冷静な判断が必要です。選択肢を知ることで、後悔が残らない判断につながるのではないでしょうか。

4.専門家に相談すれば、よりよい選択ができる

介護は誰にでも起こり得るライフステージの一つです。自分のキャリアやライフプランを調整して、ご自身に合った選択ができるよう、必要な情報を集めて検討してみてください。ぜひ、その思いや状況を相談窓口で率直に話してみてください。介護と仕事の両立に不安を感じたときは、まず相談窓口や身近な支援先に相談してみてはいかがでしょうか。

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